江戸時代から続く伝統製法
高知県黒潮から届く“入野さとふ”
昨年の12月。
四国のおいしいものが並ぶ まなべ商店の店主 眞鍋久美さんから、「すごいお砂糖がある!」 と連絡をいただきました。
砂糖といっても、原材料、製造方法など様々。
菓子屋にとって、とても重要で近いはずの素材であるにも関わらず、なかなか作り手さんを知る機会がなく、とても遠い存在だなあ、ともんもんとしている中での嬉しいお知らせでした。
くみちゃんが教えてくれたお砂糖は、入野砂糖というもの。お恥ずかしながら、それまで入野砂糖というものを知らなかった私たち。さっそく、くみちゃんに旬の“入野さとふ”を送ってもらいました。
入野砂糖を、初めて食べた時の衝撃!
口の中でさらさらほどけて、いっぱいに広がる豊かな香り。その先にある風景がうかぶようなひとくちは忘れられない味でした。
200年続く伝統製法、入野砂糖
入野砂糖は、高知県黒潮町入野地区で200年続いています。サトウキビの栽培から収穫まで全て手作業で行い、江戸時代から続く伝統製法で焚き上げます。
そんな歴史深い入野砂糖の栽培、製糖、販売までを一貫して行うのは、入野砂糖研究会所属 イノタネアグリ の秋吉さんご夫妻。
入野砂糖の世界へ、昔から続けてきた “普通” のこと
もともと林業をやっていらした秋吉さん。
地元入野地区で活動されている入野砂糖研究会の会長さんからやってみないか、とお声がかかったことで入野砂糖の世界へ。
200年の歴史を持ち、一時期は土佐藩の財政を支えるほどの重要な産業でした。
秋吉さんの師匠である地元のおばあちゃんたちは、農薬は使わずに野菜やサトウキビを栽培します。おばあちゃんたちにとって無農薬でつくることは、特別なことではなく、昔から続けてきた、“普通”のことなのです。
ですが、2年前から無農薬栽培ではなくなりました。理由は、地域の伝統文化である入野砂糖がとだえてしまうくらいの大量の虫の発生。虫たちは一度飛んで来たらずっと住み続けどんどん増えるばかりで減る事がありません。
秋吉さんは有機での共存の方法も模索しましたが難しく、無農薬栽培を続けることができなくなってしまったのです。原因ははっきりとはわかりませんが、地球温暖化など環境の変化も大きいところなのかもしれません。
その中でも秋吉さんは循環的によくないものは使わずに栽培し、有機肥料を使う際も自分たちの五感で確認しながらいれていきます。(検査機関に出したところ、体に有害なものは一切検出されませんでした。)
秋吉さんたちは、農薬よりも土に残る肥料の方が大切だと教えてくれました。
収穫時期には肥料成分がゼロになることを目指します。実際に収穫時期である10月くらいのサトウキビには肥料はほとんど残っていないそうです。
自分たちの描く最高の砂糖に向かって、育てていく
サトウキビは、切る場所によっても味が変わる。これもまた衝撃でした。その味を決めるのはご夫妻だけ。お二人がイメージする最高の入野砂糖があり、その味を目指して、サトウキビを信じて向き合い、寄り添いながら育てていきます。1年間育てたサトウキビを土から離す大切な瞬間は、スパッと切って、生きた命をいただくような気持ちで収穫します。
秋吉さんご夫妻が育てるサトウキビは、昔ながらの普通を大切にして、今をこれからにつなげていく“伝統栽培”なのです。
“さとふ” の声をきき、欲を出さずに導く
11月、収穫したサトウキビを “くど” と呼ぶ窯で、ほぼ寝ずに焚き続け、丁寧に丁寧に焚き続けると、その “さとふ” の声が聞こえてくるようになります。
砂糖を作る工程の中で、“焚き手”と“入れ手”という役割があります。
4つの工程を経て焚き上がった砂糖を入れ手に託し、30cmくらいの木箱に流し入れていく。仕上げの作業が100だとしたら、焚き手が50、入れ手が50。どちらが欠けても目指す砂糖にはならない大事な役割です。
流し入れて固まった砂糖を木槌でこんこんと割り、天日干しをしたあと、ふるいにかけたものが小粒、残ったものが大粒となり、12月に私たちのもとへ届くのです。
風土に育まれるイリノザトウ
秋吉さんは、砂糖は農産物であり、旬があること、そしてその土地のものを使うことがとても大切だということを教えてくださいました。
美しい山々、そこから吹き下ろす冷たい風。
入野地区の風土すべてが入野砂糖を育んでいる。
人間はサトウキビの力を超えることができない。人間がどれだけ欲を出さずに、導けるのか。
誠実にそしてクリエイティブに砂糖を作るご夫婦の姿に勇気とワクワクをいただきました。
8/21.22 BULK COOKIE
8月21日、22日のBULK COOKIE のイベントで入野さとふを販売させていただきます!
小粒と大粒それぞれのお砂糖で作ったプリンもご用意する予定です。ぜひ食べ比べてみてくださいね。
そしてイチオシは、蜜砂糖 “ボカ”。砂糖に仕上がる前にとれるもので地元でしか消費されていなかったもの。一口ふくむと広がる香りと味わい。口の中からなくなってしまっても余韻が美しく、思い出して思わずうっとりしてしまいます。
数量限定です。ぜひぜひお楽しみに〜!
■イノタネアグリ
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■まなべ商店
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■AYAKO NIKI【PHOTO】
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